亜鉛・クロム・マグネシウムの糖尿病の関係について

筆者について

医療施設に勤務する現役薬剤師です。

日々糖尿病の患者さんたちと対面する中で、
処方箋薬を服用するのも大事
だけど、

糖尿病の人で「体内で不足してしまう栄養素」の知識を知らない人が多い
ことに気づかされます。

糖尿病で悩んでいる方にこの情報を見てもらえたらと思い、
論文をもとに解説します。

1. 亜鉛

糖尿病の人は、亜鉛が尿から排出されやすいことが分かっています^⁽¹⁾。
そして体内で亜鉛が不足すると、インスリンの分泌が減り、血糖値を上げてしまいます。

亜鉛に関する論文

糖尿病予備軍に対する亜鉛投与（ランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験）⁽²⁾。

試験内容：
200人の被験者（うち男性43％、平均年齢51.8±7.3歳）を対象に、12か月間実施した臨床試験。被験者の半数は亜鉛を摂取するグループに、もう半数はプラセボを摂取するグループに分かれた。

結果：
両方のグループで、試験前の血中に含まれる亜鉛濃度は正常値を下回っていた（15.29-21.41μmol/ L）。
試験の最後には、亜鉛を摂取したグループと比較して、プラセボを摂取したグループで有意に高い割合の参加者が2型糖尿病を発症した（25.0％対11.0％、P = 0.016）。

結論：
亜鉛の投与は、β細胞の機能を改善しながら、血糖値とインスリン抵抗性を低下させた。
さらに、糖尿病への進行を減らし、総コレステロール値、LDLコレステロール値にも有益な効果をもたらした。

2. マグネシウム

糖尿病の人は、マグネシウムも尿から排出されやすいことが分かっています⁽²⁾。
マグネシウムが体内で不足すると、インスリンの分泌が悪くなります。
マグネシウムを摂取することで、最大47％糖尿病のリスクを下げることができるとも言われています。

マグネシウムに関する論文

マグネシウムの経口投与は、2型糖尿病患者のインスリン感受性と代謝コントロールを改善する（ランダム化二重盲検プラセボ対照試験）⁽³⁾。

試験内容：
2型糖尿病を患っており、かつ、血中マグネシウム値が低い合計63人の被験者が、16週間、毎日マグネシウムを摂取した。

結果：
マグネシウムを摂取した被験者において、有意に血中のマグネシウム濃度が上がり（0.74±0.10対0.65±0.07 mmol /L、P = 0.02）、HOMA-IR指数が下がり（3.8 ±1.1対5.0 ± 1.3、P = 0.005）、空腹時血糖値が下がり（8.0 ± 2.4 対10.3 ± 2.1 mmol /L、P = 0.01）、そしてHbA1c値も下がった（8.0 ±2.4対10.1±3.3％、P = 0.04）。

結論：
2型糖尿病を患っており、かつ、血中マグネシウム値が低い人において、マグネシウムの経口投与は、血中のマグネシウム値を回復させ、インスリン感受性と代謝コントロールを改善する。

3. クロム

糖尿病など、インスリン機能に異常が生じている場合、クロムもまた、尿から排出されやすくなることが分かっています⁽⁴⁾。
クロムが体内で不足すると、インスリン機能が低下し、耐糖能低下が起こると考えられています。

クロムに関する論文

2型糖尿病患者において、高用量のクロム摂取はブドウ糖とインスリンに関連する
数値を改善する⁽⁵⁾。

試験内容：
2型糖尿病の治療を受けている男女180人を、①プラセボ、②クロム（ピコリン酸クロム）を1.92μmol（100μg）を1日2回、③クロム（ピコリン酸クロム）を9.6μmol（500μg）を1日2回摂取する３つのグループに分け、薬物治療の内容や食事内容を変更してもらわずに４カ月間追った。

結果：
空腹時血糖値はグループ③が最も低かった（4か月時点での値：①8.8±0.3mmol/L、③7.1±0.2 mmol/L）。
ブドウ糖負荷試験２時間後の血糖値についても、グループ③が最も低かった（4か月時点での値：①12.3±0.4 mmol/L、③10.5±0.2 mmol/L）。
さらに、空腹時インスリン値についても、グループ③が最も低かった（4か月時点での値：①118±3pmol/L、③95±2pmol/L）

結論：
クロムの投与はHbA1c値、血糖値、インスリン値、そしてコレステロール値に対して有意な効果を示した。

その他、糖尿病患者、血糖値が高い人が摂るべき栄養成分があります

マンガン
インスリンの合成を助け、血糖値を下げる働きがあります。
19,862人分を５年間にわたって調査した研究では⁽⁶⁾、女性において、マンガンの摂取量が多い方が、二型糖尿病の発症率が低い傾向にありました。

ベルベリン
合計1,068人の被験者を対象にした、14個のランダム化試験を分析した2012年の研究⁽⁷⁾では、ベルベリンについて以下のことが観察されました。

ベルベリンの摂取と生活習慣の改善を組み合わせることで、空腹時血糖値、食後血糖値、HbA1c値を有意に改善することができる。
ベルベリンには従来の血糖低下薬と同程度の血糖コントロール効果がある。
ベルベリンを血糖低下薬と併用することで、血糖低下薬だけの場合よりも血糖低下の効果が見られた。

ゴーヤ
2013年に発表された研究では、シナモンには以下の効果があるそうです⁽⁸⁾。

空腹時血糖値を下げる
総コレステロール値の改善、LDLコレステロール値を下げる
血中の中性脂肪、または脂肪を減少させる。
インスリン感受性を改善する

ベルベリンの摂取と生活習慣の改善を組み合わせることで、空腹時血糖値、食後血糖値、HbA1c値を有意に改善することができる。
ベルベリンには従来の血糖低下薬と同程度の血糖コントロール効果がある。
ベルベリンを血糖低下薬と併用することで、血糖低下薬だけの場合よりも血糖低下の効果が見られた。

桑（クワ）
桑の葉抽出物は日本のサプリメント市場でもよく見られる成分です。2018年のある研究⁽¹⁰⁾によると、桑の葉抽出物を摂取することで、炭水化物を摂取しても血糖値が上がりにくくなったことが観察されました。

マリアアザミ
肝臓を強化するハーブとして知られるマリアアザミですが、糖尿病患者の血糖値を下げることが分かっています⁽¹¹⁾。

ギムネマ
ギムネマの抽出物を18か月間摂取した1型糖尿病の人々では、インスリンのみを摂取したグループと比較して、空腹時血糖値が大幅に低下したことが分かっています⁽¹²⁾。

食物繊維
食物繊維は炭水化物の一種でありながら、血糖値を上げず、また、糖尿病の様々な合併症対策になるため、アメリカ糖尿病協会も高血糖対策に食物繊維が豊富な食事を摂ることを推奨しています⁽¹³⁾。

これらの栄養素は、サプリメントから摂取できます。
ただし、注意したいのは、安いからと言って安価なものではなく、
高品質な原料を使ったサプリメントを摂るべきだということです。

私が薦めるサプリメント

アメリカの製造工場は審査が厳しい為、サプリメントに関しては信頼できるのではないかと思います。

参考文献

（１）Rober M Walter, Janet Y Uriu-Hare, Katherine Lewis Olin, Michelle H Oster, Bradley D Anawalt, James W Critchfield, Carl L Keen; Copper, Zinc, Manganese, and Magnesium Status and Complications of Diabetes Mellitus. Diabetes Care 1 November 1991; 14 (11): 1050–1056. https://doi.org/10.2337/diacare.14.11.1050
（２）Ranasinghe, P., Wathurapatha, W. S., Galappatthy, P., Katulanda, P., Jayawardena, R., & Constantine, G. R. (2018). Zinc supplementation in prediabetes: A randomized double-blind placebo-controlled clinical trial. Journal of diabetes, 10(5), 386–397. https://doi.org/10.1111/1753-0407.12621
（３）Martha Rodríguez-Morán, Fernando Guerrero-Romero; Oral Magnesium Supplementation Improves Insulin Sensitivity and Metabolic Control in Type 2 Diabetic Subjects: A randomized double-blind controlled trial. Diabetes Care 1 April 2003; 26 (4): 1147–1152. https://doi.org/10.2337/diacare.26.4.1147
（４）厚生労働省（2009）「クロム」＜https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4an.pdf＞
（５）Anderson, R. A., Cheng, N., Bryden, N. A., Polansky, M. M., Cheng, N., Chi, J., & Feng, J. (1997). Elevated intakes of supplemental chromium improve glucose and insulin variables in individuals with type 2 diabetes. Diabetes, 46(11), 1786–1791. https://doi.org/10.2337/diab.46.11.1786
（６）Eshak, E. S., Muraki, I., Imano, H., Yamagishi, K., Tamakoshi, A., & Iso, H. (2021). Manganese intake from foods and beverages is associated with a reduced risk of type 2 diabetes. Maturitas, 143, 127–131. https://doi.org/10.1016/j.maturitas.2020.10.009
（７）Dong, H., Wang, N., Zhao, L., & Lu, F. (2012). Berberine in the treatment of type 2 diabetes mellitus: a systemic review and meta-analysis. Evidence-based complementary and alternative medicine : eCAM, 2012, 591654. https://doi.org/10.1155/2012/591654
（８）Allen, R. W., Schwartzman, E., Baker, W. L., Coleman, C. I., & Phung, O. J. (2013). Cinnamon use in type 2 diabetes: an updated systematic review and meta-analysis. Annals of family medicine, 11(5), 452–459. https://doi.org/10.1370/afm.1517
（９）Kim, S. K., Jung, J., Jung, J. H., Yoon, N., Kang, S. S., Roh, G. S., & Hahm, J. R. (2020). Hypoglycemic efficacy and safety of Momordica charantia (bitter melon) in patients with type 2 diabetes mellitus. Complementary therapies in medicine, 52, 102524. https://doi.org/10.1016/j.ctim.2020.102524
（１０）Wang, Ruihua MDa; Li, Yanfen MDa; Mu, Wei MDa; Li, Ziqiang MDa; Sun, Jinxia BS, Bo, Mi, BSa; Wang, Baohe MDa; Zhong, Zhong BSb; Luo, Xiuzhen BSc; Xie, Chen MDc,*; Huang, Yuhong MDa,* Mulberry leaf extract reduces the glycemic indexes of four common dietary carbohydrates, Medicine: August 2018 - Volume 97 - Issue 34 - p e11996　doi: 10.1097/MD.0000000000011996
（１１）McKennon, S. A. (2021). Non-Pharmaceutical Intervention Options for Type 2 Diabetes: Complementary Health Approaches and Integrative Health (Including Natural Products and Mind/Body Practices). In K. R. Feingold (Eds.) et. al., Endotext. MDText.com, Inc.　
（１２）Ghorbani, AhmadBest herbs for managing diabetes: a review of clinical studies. Brazilian Journal of Pharmaceutical Sciences [online]. 2013, v. 49, n. 3 [Accessed 21 April 2022] , pp. 413-422. Available from: <https://doi.org/10.1590/S1984-82502013000300003>.　
（１３）American Diabetes Association (2007). Nutrition Recommendations and Interventions for Diabetes: a position statement of the American Diabetes Association. Diabetes care, 30 Suppl 1, S48–S65. https://doi.org/10.2337/dc07-S048